はじめに
「話し上手は一時の得、聞き上手は一生の得」——そんな言葉があります。
ビジネスでも恋愛でも、そして友人関係でも、なぜか人に好かれ、信頼され、頼られる人がいます。
その共通点が「聞く力」。
特に、ただ黙って聞くのではなく、“話させ上手”として相手を気持ちよく話させられる人は、人生のあらゆる場面で成功しやすい傾向があります。
本記事では、実践的な聞き方のスキルと、相手の会話を引き出す“質問力”を中心に、今すぐ使えるテクニックを紹介します。
【1】聞く力とは「話させる力」
聞き上手とは、単に静かにうなずいて相手の話を聞く人のことではありません。
むしろ、相手の話したい気持ちを自然に引き出し、気持ちよく話してもらう“場”をつくる人のことです。
ハーバード大学の研究(Tamir & Mitchell, 2012)によると、人は自分の話をしているとき、脳内でドーパミンが分泌され、報酬系が活性化します。
つまり、話すこと自体が「快」なのです。
この快感を生む相手——つまり「話を聞いてくれたあなた」への好意や信頼が高まります(古典的条件づけの応用)。
さらに、相手が話した後は、こちらの話も受け入れてもらいやすくなるという心理効果(Collins & Miller, 1994)もあり、会話の主導権すら握ることができます。
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聞く力が人間関係を変える!好かれる人の聞き方・話させ上手になるコツとは?
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【2】実践的な“聞き方”の基本テクニック
● 相手の言葉を繰り返す(オウム返し)
「昨日、プレゼンで緊張しちゃって…」
→「プレゼンで緊張したんだね」
言葉をそのまま繰り返すことで、相手は「自分の話が伝わっている」と感じ、安心します。
● あいづちはリアクション豊かに
「へえ!」「なるほど」「それでどうなったの?」など、表情や声のトーンを加えるだけで、共感力が一気に高まります。
● 話のテンポを合わせる(ペーシング)
相手がゆっくり話すタイプなら、こちらも落ち着いて聞く。
テンションが高ければ、少しエネルギーを合わせて聞く。これだけで「波長が合う」と感じてもらえます。
● 相手の価値観に寄り添う
意見の違いがあっても、いったん「そう思うんだね」と受け止めること。
「それは違うよ」と反論する前に、まずは理解する姿勢を見せるのが信頼の第一歩です。
【3】会話を深める質問力の極意
会話をスムーズに進める最大のポイントは、「質問力」。
質問は、ただ情報を引き出すためだけでなく、相手に自分自身の思いや価値観を“再発見”させるきっかけになります。
ここでは、質問力の3ステップを紹介します。
STEP1:オープンクエスチョンを使う
「はい」「いいえ」では答えられない質問をすることで、相手が話しやすくなります。
NG:「楽しかった?」
OK:「どんなところが楽しかったの?」
STEP2:感情に焦点を当てる
相手の行動だけでなく、そこにあった気持ちを尋ねましょう。
「そのとき、どう感じたの?」
「驚いた?それとも嬉しかった?」
STEP3:相手の価値観を引き出す
信頼関係を深めるには、価値観レベルの質問が有効です。
「なんでそれを大事にしてるの?」
「その考え方って、いつから持ってるの?」
※「価値観レベルの質問」とは、相手の行動や選択の“背景にある考え方や大切にしていること”にフォーカスする質問のことです。 つまり、表面的な情報や事実を聞くだけでなく、相手の価値観・信念・感情に触れる質問を指します。
✅ たとえば、「行動レベル」の質問と「価値観レベル」の質問の違い
種類 | 質問例 | ねらい |
---|---|---|
行動レベルの質問 | 「週末、何してたの?」 | 事実・行動を聞く質問 |
価値観レベルの質問 | 「週末の過ごし方で大事にしてることって何?」 | その人の考えや価値観を引き出す質問 |
🎯 価値観レベルの質問の効果
- 会話が深まる:相手は「理解されている」と感じやすくなり、より本音を話してくれる。
- 信頼関係が強くなる:自分の価値観を受け止めてくれた相手には、心理的安全を感じやすい。
- 好意を持たれやすい:「興味を持ってくれている」と実感してもらえる。
🗣 具体的な価値観レベルの質問例
- 「その選択をした背景って、どんな思いがあったの?」
- 「それを大事にしてるのって、どういう理由から?」
- 「あなたが一番“らしさ”を感じる瞬間って、どんなとき?」
- 「何を基準に、その仕事を選んだの?」
- 「それが好きってことは、どんな価値観に近いのかな?」
🌱 ポイント:価値観レベルの質問には“安心感”が必要
いきなり深い質問をしても、相手が「探られている」と感じたら逆効果です。
まずは表面的な会話 → 共感 → 少しずつ深い話へ…という“段階を踏む”のがコツです。
つまり、価値観レベルの質問とは、「その人らしさ」や「人生観」に触れる質問。
これを自然にできるようになると、まさに「聞く力」が一段上がります。
【4】“話が続く人”と“すぐ終わる人”の差は質問の質
話がすぐ終わる人の特徴:
- 質問が表面的(「今日は何してたの?」だけ)
- 「うん、そうなんだ」で終わる
- 自分の話ばかりにすぐ戻す
話が続く人の特徴:
- 「その後どうなったの?」のように続きを促す
- 「へえ!それってどんな気持ちだった?」と感情を引き出す
- 自分の話も関連づけながら返す
【5】付録:こんなときはこう言い換えよう!質問・リアクション例集
● 話のきっかけ作り
NG:「元気?」
OK:「最近、何か面白いことあった?」
NG:「今日は何してたの?」
OK:「今日はどんな一日だった?」
● 会話を深める
NG:「そうなんだ」
OK:「それ、どんな感じだった?」
NG:「へえー」
OK:「具体的に言うと、どういうこと?」
NG:「大変だったね」
OK:「そのとき、何が一番しんどかった?」
● 感情に寄り添う
NG:「気にしなくていいよ」
OK:「それはつらかったね。どんなふうに乗り越えたの?」
NG:「頑張って」
OK:「あなたならきっとできるって思ってるよ」
おわりに
聞く力は、誰もが今からでも鍛えられる「最強のコミュニケーションスキル」です。
話し上手になるよりも、話させ上手になるほうが、周囲との関係性は劇的に変わります。そして、質問力を身につければ、あなたの聞き方は“共感”から“信頼”へとレベルアップします。
「人は、話を聞いてくれた人のことを信頼する」
この原則を忘れず、日常の会話から少しずつ実践してみてください。